ニュース NEWS

2023年11月1日

所長交代のご挨拶


 このたび、前所長が会長となり、私、松浦憲政が所長を引き継ぐこととなりました。

 弊所は、前所長が1982年に創立して以来40年以上の間、お客様の知的財産をお守りするべくサービスを提供してきました。この間で得た経験及び信頼を更に発展させ、お客様がより安心して仕事を頼める事務所として成長して行く所存であります。つきましては、今後とも日々努力を惜しまず一生懸命に、所員一同で一丸となって頑張って行きたいと思っております。
 甚だ微力で至らぬところが多々あると存じますが、今後とも倍旧のご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます。

弁理士:松浦憲政

2023年5月22日

事務所移転のご挨拶


 新都心国際特許事務は2023年6月19日よりオフィスを下記に移転することとなりました。

■移転先住所:東京都新宿区西新宿1丁目8番1号 新宿ビルディング5階
■電話番号:03-3340-5181(代表)
■FAX番号:03-3340-5185
#電話番号及びファックス番号は変更ありません。

 これを機に所員一同、さらなる社業の発展に精励し、皆様のご期待に沿えますよう
鋭意努力いたす所存でございます。
 今後とも宜しくご交誼賜りますようお願い申し上げます。

■移転先での業務開始日
 2023年6月19日(月)より
 ※現所在地での業務につきましては、2023年6月16日(金)をもって終了させていただきます。

移転先案内図

以上

弁理士:松浦 憲三

2013年12月27日

特許付与後レビュー(付与後異議)制度について

 特許付与後レビュー(付与後異議)制度案が、産業構造審議会知的財産政策部会特許制度小委員会で、平成25年2月25日に承認され、当該案を基にした特許法改正案が作成され、早期の施行を目指す段階にあるとされています(前記特許制度小委員会の平成25年2月25日の議事録参照)。以下に、前記特許付与後レビュー制度案の骨子を紹介します。本資料が皆様のご参考になれば幸いです。

1.付与後レビュー制度におけるフローイメージ

2.付与後レビュー制度の骨子

 2.1 申立の時期:
・特許公報の発行から6か月。

 2.2 申立理由:
・権利帰属に関する事由は含まず公益的事由のみ可能(新規性・進歩性・明細書の記載要件・補正要件等)。

 2.3 申立人:
・利害関係を問わず何人でも可能。
・申立人の氏名や名称は、申立書に記載が必要。

 2.4 審理及び論点整理:
・審判合議体が、論点整理して、原則的に書面審理する。
・複数の申立てがなされた場合、まとめて審理。
・審理の初期の段階で、審理のスケジュールを明確にし、最終判断を速やかに出す。

 2.5 特許権者の対応:
・審判合議体が特許を取り消す理由があると判断した場合にのみ、その旨の通知がなされるので、その際、意見書および/または訂正書の提出で対応可能。
・意見書・訂正書によっても、特許を取り消す理由が解消されない場合、その旨の通知がなされ、再度、訂正の機会が与えられる。
・特許の取消しを受け、不服がある場合は、東京高等裁判所(知的財産高等裁判所)に出訴可能。

 2.6 申立人の対応:
・特許権者により特許の訂正がなされた場合、希望により、意見書の提出が可能。希望しない場合は、手続への関与を強制されない。

 2.7  申し立てに必要な印紙代:
・無効審判よりも低廉なものとする。

http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/tokkyo_shiryou038.htm

以上

弁理士:松浦 憲三

2012年11月13日

米国特許法:2012年9月16日発効の制度について

 2011年9月16日に米国特許法改正が成立してから約1年が経過し、幾つかの制度が発効しています。今回は2012年9月16日付けで発効した特許付与後レビュー(PGR)、当事者系レビュー(IPR)及び補充審査(Supplemental Examination)について、その概要をご報告します。皆様のご参考になれば幸いです。

1.PGR,IPR,補充審査とは

 PGR(Post-Grant Review;特許付与後レビュー)及びIPR(Inter Partes Review;当事者系レビュー)は、第三者が特許の有効性を争う(無効化する)ための手段です。当事者系レビューは、従来の当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)に代わって発効しました。一方補充審査(Supplemental Examination)は、特許権者が自己の特許の有効性を確保するための手段です。なお特許の有効性に関する制度としては、これらの新たな制度に加え、これまでの査定系再審査・再発行等も存続します。

2.PGR及びIPRについて

 2.1 PGR,IPRを請求できる者
 特許権者以外の第三者がPGR,IPRを請求できますが、「実際の利益当事者(RPI;Real Party in Interest)」であることが必要です。RPIとは、対象特許権に関与している人や団体であって、他人が請求したPGR,IPRや訴訟であっても利益を得る者をいいます。

 2.2 請求の対象となる特許
 PGRは先願主義制度下で付与された特許に対し請求できますが、先願主義制度での出願が始まるのは2013年3月16日なので、PGRが実際に請求されるのは大分先になりそうです。IPRは全ての特許に対し請求できますが、制度の発効(2012年9月16日)直後であり現時点では実例の蓄積は少ないと思われます。

 2.3 請求理由
 PGRは特許性に関する全ての根拠・理由(101条,112条,102/103条)に基づき請求できます。一方IPRは特許及び刊行物を先行技術とする新規性・進歩性の欠如(102/103条)に基づいてしか請求できません。

 2.4 請求時期
 PGRは特許/再発行特許付与後9ヶ月以内に請求できます。IPRは「特許/再発行特許付与後」と「PGRが請求されていた場合、PGRが終了した時」の遅い方から終了できます。

 2.5 手続き開始の要件
 PGRの手続きが開始されるためには、“more likely than not”の要件を満たすことが必要です。これは、少なくとも一つのクレームが「どちらかと言えば」無効になる可能性が高い(50%より高い)ことを意味します。一方IPRの場合は“reasonable likelihood”の要件を満たすことが必要で、無効であることを主張するクレームのうち少なくとも一つについて、請求人の主張が通る「合理的可能性」があることが必要になりますが、「合理的可能性」は50%で足りる(PGRよりもハードルが低い)とされています。

 2.6 IPR,PGRのメリット
 裁判所での訴訟では「特許は有効である」との推定を受けるので相手方(侵害被疑者)が無効性を証明する必要がありますが、IPR,PGRではそのような推定はなく、特許権者と請求人とが同じ立場で特許の有効性を争うことになります。

 IPR,PGRの審理はUSPTOのPTAB(Patent Trial and Appeal Board;特許トライアル・審判部)で行われますので、特許に関する専門機関でない裁判所よりも的確に判断されることが期待されます。

 また訴訟よりも低コストで請求できる他、手続き開始からPTABの決定が出るまで「1年以内」と条文化されており早期解決が期待できます。さらにIPR,PGRの請求により侵害訴訟が自動的に停止する、という効果があります。

3.補充審査について

 (1)補充審査は、「特許に関連すると思われる情報を、USPTOに考慮/再考慮、あるいは訂正してもらう」ために請求します。具体的には例えば、審査過程で出し忘れていたIDSを提出しこれに基づき再度審査してもらうことや、情報不提出により訴訟で“inequitable conduct(不公正行為)”と判断されるのを防止することが考えられます。

 (2)補充審査は、全ての特許(2012年9月16日以前及び以後に付与された特許)に対して利用可能です。特許権者のみが請求でき、第三者は参加できません。

 (3)補充審査が請求されると、USPTOは請求から3ヶ月以内に、「特許性に関する実質的に新たな疑義(SNQ:Substantial New Question of Patentability)が存在するかどうかを判断します。

 上記内容についてご質問等ありましたら、遠慮なく永田までお問い合わせ下さい。

以上

弁理士:松浦 憲三

弁理士:永田 秀則

2011年10月12日

米国特許法改正の概要

 ご存知のように、2011年9月16日に米国で特許法改正法が成立しましたので、その概要をご報告します。本資料では、皆様が使いやすいように改正法の適用時期を明確に致しました。皆様のご参考になれば幸いです。

改正内容

1.「先願主義」の導入(優先日が2013年3月16日以降の出願に適用)

 優先日(基礎出願日)が改正法成立後18ヶ月(2013年3月16日)以降の出願について、「先願主義(“First Inventor to File”)」に関する規定が適用される。
(1)新規性・進歩性の判断基準時が「発明日」から「有効出願日」へ
 新規性・進歩性の判断基準時が、これまでの「発明日」から「有効出願日(effective filing date)」に変更される。なお「有効出願日」とは、米国での現実の出願日(分割出願等の場合は原出願日)、または優先日を意味する。
(2)「先行技術」の範囲拡大
 (i)新規性喪失行為(公用、商用行為等)の場所に関して、「米国内で」との文言が削除され、行為地によらず適用される(新規性が喪失する)こととなった。また1年間のグレースピリオドは存続するが、その適用範囲は縮小されることとなった。
 (ii)現行法では英語で公開されていないPCT出願は102条(e)の後願排除効がないが、改正法では通常の米国出願と同様に先行技術としての地位が付与されることとなった。
 (iii)本規定の適用後は、発明日から有効出願日までの公知・公用行為やその期間に発行された刊行物等も先行技術となるため、従来のような先発明の立証による引例の回避(swear behind)はできなくなった。
 このように、本規定の適用後は現在よりも先行技術の範囲が広がることとなるため、適用開始(2013年3月16日)までに基礎出願・仮出願等しておくことを検討すべきと考えられる。
(3)インタフェアランスの廃止と発明者決定手続き
 現行のインタフェアランス手続は先願主義への移行措置の一部として段階的に廃止され、これまでインタフェアランス手続で行われていた発明者決定の手続は、新たな”derivation proceedings”で行うこととなった。
(4)102条/103条の条文移動・削除等
 上記改正に伴い、現行の102条(f)の削除、102条(g)の段階的廃止、103条(c)の102条(c)への移動、等が行われる。また現行の102条(e)は削除され、102条(a)(2)に類似の規定が設けられた。

2.手数料関連規定の変更(2011年9月26日以降の手続きに適用)

 大規模・小規模事業体に対するOfficial Fee(USPTOの手数料)が15%増額された。なお従来は米国議会がほとんどの手数料を設定していたが、手数料改定内容の事前公表・意見募集手続の実施等を条件として、USPTOが手数料を設定できることとなった。

3.優先審査制度の導入(2011年9月26日から請求可能)

 法改正により、これまでの早期審査(“Accelerated Examination”)よりも早期に審査される優先審査制度(“Track 1 Priority Examination”)が導入された。この優先審査制度は、現時点では手数料が$4,800、独立クレーム数が4以下であること、総クレーム数が30以下であること等を要件としているが、今後規則により変更される可能性がある。なお、出願人がOffice Actionに対する応答期間を延長した場合やRCEを請求した場合等は、優先審査の取り扱いが停止される。

4.ベストモード開示要件違反の効果(2011年9月16日から適用)

 特許権侵害訴訟における被告側抗弁事由としてのベストモード開示義務が、282条から削除された。ただし明細書の記載要件としてのベストモード開示義務規定(112条第1パラグラフ)は維持される。

5.先使用の抗弁の対象拡大(2011年9月16日の時点で係属中、またはその後発行される特許が対象)

 先使用の抗弁(273条)は、従来ビジネス方法の特許に関してのみ認められていたが、法改正により全ての種類の特許に適用されることとなった。

6.特許表示方法の変更(2011年9月16日以降に発行される特許が対象)

 改正法では、製品に直接特許番号を表示するのではなく、製品自体にはWebサイトのURLを表示しリンク先のWebサイトで特許番号を表示する“Virtual Marking”が可能となった。また現行法では誰でも虚偽表示による損害賠償請求を行うことができるが、改正法では実際に損害を受けた者又は政府に限定されることとなった。

7.第三者による情報提供(2012年9月16日から情報提供可能)

 改正法では、USPTOに係属中の特許出願に対して、第三者が出願公開後①許可通知発行まで、または②出願公開から6カ月または最初の拒絶理由通知の遅い方まで、に特許及び/又は印刷刊行物を提出できることが条文上規定された。この情報提供制度は、特許性との関連性について簡潔な説明が要求される点、情報提供可能時期が出願公開後に限定される点、提出する情報が特許及び/又は印刷刊行物に限定される点、において従来の情報提供制度(規則1.99及び1.291)と異なる。

8.補充審査(2012年9月16日以降に発行される特許が対象)

 特許権者はUSPTOに対し、「特許に関連すると思われる情報を(再)検討する」こと、例えばIDSとして提出していなかった文献を考慮して再検討するよう要求することができるようになった。これにより「不公正な行為」として特許が行使不能になることを避ける(包袋を“クリーン”なものにする)ことが可能となったため、特許権者は権利行使前に補充審査を受けておくことが考えられる。

9.特許付与後レビュー(2012年9月16日から請求可能)

 利害関係のある第三者は、USPTOに対し特許付与後9カ月以内に「特許付与後レビュー(Post-Grant Review;以下“PGR”)」を請求できる。なお請求理由は先行技術によるものに限定されずいかなるものでもよく、請求認容の可能性が5割を超えれば(“more likely than not”であれば)受理される。

10.当事者系レビュー(2012年9月16日から請求可能)

 これまでの「当事者系再審査(Inter Partes Reexamination)」に代えて「当事者系レビュー(Inter Partes Review)」が導入された。当事者系レビューの請求は特許付与後9ヶ月経過後(PGRの請求期間経過後)、またはPGRの審理終了後である。なお請求理由は先行特許または刊行物の存在による新規性・進歩性欠如に限定され、また請求が認められる合理的な可能性(“reasonable likelihood”)が必要とされる(特許付与後レビューよりも、請求認容の基準が高い)。なお特許権者は1回に限りクレームを訂正できる。

11.複数侵害被疑者の併合制限(2011年9月16日以降の訴訟が対象)

 従来の制度では、互いの行為に関連のない複数の者を被告として1つの訴訟を提起することができ、いわゆる「パテント・トロール」がこの制度を悪用していた。改正法では、複数の者を訴えようとする場合、それらの者の間に「共同責任」があることを特許権者が立証しない限り、個々の者に対する訴訟をそれぞれ提起することが必要とされており、訴訟提起のコストを増加させることで「パテント・トロール」による制度悪用が図られている。

12.その他

 上記事項の他、納税戦略及び人体組織を保護対象から除外、第三者系再審査に関する訴訟の管轄変更、宣誓書に発明者の署名が得られない場合に関する規定の変更、審判部の組織改編、等が行われている。

 なお、上記内容についてご質問等ありましたら、遠慮なく 永田までお問い合わせ下さい。

以上

弁理士:松浦 憲三

弁理士:永田 秀則

2011年7月7日

平成23年度特許法等改正の概要

 ご存知のように、今国会で特許法等が改正され6月8日に公布され、この日から1年以内に施行される予定です(2012年4月1日の見込み)。本資料が皆様のご参考になれば幸いです。

改正内容

1.発明の新規性喪失の例外規定の見直し(特許法30条等)

 新規性喪失の例外規定に関し、「特許を受ける権利を有する者の行為に起因して」公知となった発明は例外規定の適用を受けられることとなった(現行の特許法30条1項を2項に移動の上で改正)。これにより特許法も意匠法と同様に、特許を受ける権利を有する者が出願前に製品発表・発売等しても救済されることとなった。

2.手続期間を徒過した場合の救済規定の拡充(特許法36条の2等)

 外国語書面出願および外国語特許出願の翻訳文提出期限、特許料の納付期限についての救済規定が設けられた(特許法36条の2、184条の4等 改正)。なお救済規定の適用には「正当な理由」が必要とされる。

3.冒認出願等に対する取戻し請求制度の新設(特許法74条等)

 今回の改正により、いわゆる冒認出願や共同出願違反の出願に対して特許がされた場合、正当権利者は、その特許権者に対して「経済産業省令で定めるところにより」特許権の移転を請求することができるようになり(特許法74条 新設)、特許権の取戻しが困難な現行制度と比較して正当権利者の保護が図られることとなった。また、冒認出願や共同出願違反の場合の特許権者から善意で特許権を譲り受けた者等については、一定の要件の下で法定通常実施権が発生することとなった(特許法79条の2 新設)。

4.通常実施権の当然対抗制度の新設(特許法99条等)

 現行法では、ライセンス(通常実施権の許諾)を受けた者は、そのライセンスを特許庁に登録しないと、特許権等を譲り受けた者から差止請求等を受け事業継続が不可能になる恐れがあるが、実務上ライセンスの登録はほとんど行われておらず特許権等の転得者に対抗できなかった。そこで今回の改正により、通常実施権等は登録をしなくても特許権の転得者等に対して対抗力を有することとなった(特許法99条 改正)。

5.特許料等の減免制度の拡充等(特許法109条等)

 (1)中小企業や大学等に対する特許料の減免期間を3年から10年に延長するとともに、対象となる中小企業等の範囲が拡大された(特許法109条、意匠法42条等 改正)。その他、出願審査請求手数料の減免対象の拡大、国際出願の調査手数料の引き下げ等が行われた。

 (2)なお出願審査請求手数料の25%減額は、この改正法とは別に、本年秋頃実施の見込みである。

6.訂正審判・訂正請求の対象(特許法126条等)

 今回の改正で「一群の請求項ごとに」訂正審判・訂正を請求することが必要となり(特許法126条、134条の2 改正)、審決も当該一群の請求項ごとに確定することとなった。ここで「一群の請求項」とは「一の請求項の記載を他の請求項が引用する関係その他の経済産業省令で定める関係」であり、典型的には独立項とその従属項が該当する。

7.審決取消訴訟後の訂正審判請求の禁止(特許法126条、164条の2等)

 (1)現行の「審決取消訴訟の提起日から起算して90日間は訂正審判を請求可能」との規定が削除されて審決取消訴訟提起後の訂正審判請求は禁止されるとともに(特許法126条 改正)、訂正審判請求に伴う差し戻し決定の規定(特許法134条の3第2項~5項、181条2項等)が廃止され、「事件のキャッチボール現象」の発生を防止することが可能となった。

 (2)また審決取消訴訟後の訂正審判請求の禁止に伴い、無効審判の審理において「審決をするのに熟した」と判断されると合議体の判断を当事者に開示する「審決予告」(実質上、無効審決の予告)が行われ、当該審決予告と併せて訂正請求の期間が指定されることとなった(特許法164条の2 新設)。

8.再審の訴え等における主張の制限(特許法104条の4等)

 現行法では、侵害訴訟の確定後に無効審決や訂正審決が確定すると再審事由となり紛争の蒸し返しが生じていたため、改正後は、無効審決や訂正審決の確定を理由とする再審の訴えは禁止されることとなった(特許法104条の4 新設)。

9.無効審判の確定審決の第三者効の廃止(特許法167条等)

 現行法では無効審判の確定審決登録後は「何人も」同一の事実および同一の証拠に基づく再度の審判請求が禁止されているが、改正後は「当事者および参加人は」との規定になり、第三者ついては一事不再理効が廃止されることとなった(特許法167条 改正)。

 なお、上記内容についてご質問等ありましたら、遠慮なく 永田までお問い合わせ下さい。

以上

弁理士:松浦 憲三

弁理士:永田 秀則

2010年2月1日

事務所フロアー変更のご連絡

 新都心国際特許事務所は新宿住友ビルのリニューアル工事に伴って、39階からリニューアル済みの23階に移転いたしました。今後ともよろしくお願い致します。

移転先:

〒163-0223
東京都新宿区西新宿2丁目6番1号
新宿住友(三角)ビル23階

業務開始日:

平成22年2月1日(月)

電話番号、FAX番号、E-mailアドレスは従来通りです。

2009年6月2日

判決紹介

  新都心国際特許事務所(被告代理人:弁理士 松浦憲三、同 八幡宏之、同松村 潔)が代理し、進歩性が争点となった無効審判審決取消訴訟事件で、知財高裁で勝訴し、最高裁で確定しましたのでご紹介致します。 

事件の表示

 発明の名称 : 終点検出方法およびシステム

事件の表示 : 知的財産高等裁判所平成19年(行ケ)第10250号(平成20年9月29日知財高裁判決)(平成21年3月13日最高裁決定) 

事件の概要

 本件は無効審判被請求人(特許権者)が所有する特許第3510622号「終点検出方法およびシステム」(以下本件特許発明という)について、無効審判請求人(弊所が代理人)は甲13(特開平7-52032)、甲22(特開平5-309558)を提示して無効審判を請求したところ、特許庁で無効審決がなされ、知財高裁における審決取消訴訟で進歩性が争われた事件である。なお審判被請求人(特許権者)は知財高裁の判決を不服として最高裁判所に上告したが、平成21年3月13日に上告は棄却されて本判決は確定した。

  審決取消訴訟における争点

 原告(特許権者)は、審決は、甲13(特開平7-52032)、甲22(特開平5-309558)と本件特許発明との相違点を看過し、本件特許発明は進歩性がないと誤って判断したものであるから、違法であり取り消されるべきであると主張した。

 知財高裁において、数次にわたる口頭準備手続き、技術説明会を重ねた結果、本件特許発明は甲13(特開平7-52032)、甲22(特開平5-309558)により、当業者が容易に発明することができたものであるから、原告の主張は採用することができないとして原告の請求は棄却された。

 争点1(甲13発明の認定の誤り及び本件発明1との相違点の看過)について(判決56P~) 

 原告は、甲13発明は、①切り抜き穴としての「窓」は研磨パッドに設けられ、②透明窓材は研磨布「窓」の部分的領域を占めるにすぎないのに、審決がこれを認定しないことは違法であると主張した。

 これに対し、知財高裁は被告の主張を採用し、審決は「透明窓材が定盤の貫通孔に嵌め込まれており、その結果、研磨パッド窓内に透明窓材が配される」と 認定しているので審決に甲13発明の認定の誤り及び本件発明1との相違点の看過はないとした。

 争点2(甲22発明の認定の誤り)について(判決57P~)

 原告は、甲22発明について、透明なポリッシングパッドはどのような表面構造を持っているのか把握できず、スラリーの構成物質と組成を把握できないから、甲22公報は引用例としての適格性に欠けると主張した。 

 これに対し、知財高裁は被告の主張を採用し、引用例は、特許発明との対比において技術思想が実施し得る程度に記載されていれば引用例としての適格性は十分であるとし、甲22公報は引用例としての適格性があるとした。

 争点3(本件発明1に関する進歩性判断の誤り)について(判決62P~)

 原告は、甲22公報には研磨パッドにスラリーの保持性能を持たせつつ光を通過させるという問題が解決されていないから甲22の発明を把握できないと主張した。

 これに対し、知財高裁は被告の主張を採用し、研磨パッドの研磨面が散乱面であっても入射光の一部が通過すれば足りるので甲22の発明を把握できるとした。 

以上

2008年4月23日

「特許法等の一部を改正する法律」公布のお知らせ

 標記の「特許法等の一部を改正する法律」が、平成20年4月11日に可決・成立し、4月18日に法律第16号として公布されました。

 今回の改正においては、①通常実施権等登録制度の見直し、②不服審判請求期間の見直し、③優先権書類の電子的交換の対象国の拡大、④特許・商標関係料金の引き下げ、⑤料金納付の口座振替制度の導入、の措置が講じられております。

 特に、特許・商標関係料金の引き下げに伴い、特許料は平均12%、商標関係料金は43%引き下げられることとなります。

 なお、施行日は未定ですが、現時点では6月1日が想定されておりますが、詳細につきましては、下記特許庁のホームページを御覧下さい。

1.特許法等の一部を改正する法律(平成20年4月18日法律第16号)

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/kaisei/kaisei2/tokkyohoutou_kaiei_200201.htm

2.平成20年特許法等改正に伴う料金改定(予定)のお知らせ

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/fy20_ryoukinkaitei.htm

3.期間延長請求書の提出方法について

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/tetuzuki/ryoukin/tokkyoryou_enchou.htm

4.6月1日から特許・商標関係料金が引き下げられます!!

http://www.jpo.go.jp/cgi/link.cgi?url=/torikumi/puresu/press_ryoukin_61hikisage.htm

弁理士:三輪英男

2007年10月23日

米国特許規則改正について

 2007年8月21日付で米国特許規則の改正が公表され、11月1日より施行されることとなりました。今回は、改正事項のうち

       1.継続的出願の回数制限

       2.クレーム数の制限

       3.関連出願情報の開示義務

の概要及び実務上の対策について、10月10日付改正内容の修正を踏まえてお知らせします。なお、規則改正の詳細は下記のUSPTO Webサイト及び資料をご参照下さい。

http://www.uspto.gov/web/offices/pac/dapp/opla/presentation/ccfrslides.pdf

http://www.uspto.gov/web/offices/pac/dapp/opla/preognotice/ clmcontclarification.pdf

http://www.uspto.gov/web/offices/pac/dapp/opla/presentation/clmcontfinalrule.html

 

1.継続的出願(Continuing Application)の制限

1.1 継続的出願の回数制限

(1)今回の改正により、1出願につき可能な継続的出願の回数が、原則として

 「2回の継続出願(Continuation Application)+1回の継続審査請求(RCE)」まで

に制限されることとなりました。この制限を超える継続的出願を行うには、請願(Petition)及び書面の提出(Showing)が必要となります。なお、「継続出願(Continuation Application)」には、一部継続出願(CIP)及び自発的分割出願が含まれます。

(2)限定要求(Restriction Requirement)で選択しなかったクレームを新たな出願とする場合(Divisional Application)は、上記回数制限にはカウントされません。またこの場合、新たな出願は親出願とは別個の“Application Family”を形成します(後述)。一方限定要求に関係なく自発的(voluntary)に継続出願(Continuation Application;いわゆる“分割出願”)を行う場合は、上記回数制限にカウントされます。

 

1.2 継続的出願の回数制限への対策

(1)継続的出願・継続審査請求の回避策

 上記制限を超える回数の継続的出願/継続審査請求が認められるための要件は非常に厳しいものですので(なぜ今までそのような補正・反論ができなかったのか、等を示す必要がある)Office Actionに対し可能な限り継続的出願/継続審査請求をせずに対応することが必要になります。継続的出願・継続審査請求を回避するための対策としては以下のものが考えられます。

(i)Final Office Actionが発せられている出願に関し、既に継続審査請求(RCE)が行われている場合(関連出願分も含む)は、11月1日以前にRCEをしておく。

(ii)不要なFinal Office Actionを受けることを避けるため、Office Actionに対して反論だけでなく現実的な範囲で補正を行い(例えばFirst Actionの時点で範囲の広いクレームと狭いクレームとを並行的に記載)、許可可能な範囲を把握するようにする。同様に、First Office Action応答前に審査官面談を行い、許可可能な補正案の感触を得るようにする。

(iii)また、PCT国際出願を活用し、国際調査報告/見解書・国際予備審査の結果を踏まえて米国移行時に予備補正を行うことにより、米国移行後に受けるOffice Actionの回数を減らす。場合によってはEPOを国際調査機関とすることも考慮する(JPOが国際調査機関だと、どうしても日本の公開公報が中心に引用されるため)パリルートの場合も、関連出願の審査結果(EPのサーチレポート等)を踏まえて米国出願の補正を(自発的に)行う。

(2)継続審査請求の代替策

 RCE・継続出願の回数制限に対し、以下のように対応することが考えられます。なおいずれの措置が有効であるかは案件ごとに異なると考えられるため、現地代理人の意見も考慮して決定する必要があります。

(i)Final Office Actionに対してはRCE及び継続出願(Continuation Application)が可能ですが、継続出願はRCEの場合よりも費用が割高になり、また新規の出願として取扱われるため(ただし出願時の利益は確保できる)、審査が遅れる可能性があります。このため早期権利化の観点からは、継続出願・RCEのいずれも可能な状況では先にRCEを請求するほうが好ましいと考えられます。

(ii)これまで継続審査請求(RCE)により対応していた状況で、上記回数制限によりさらなるRCEが認められない場合は、拒絶出願と同様のクレームを自発的に分割(この場合の新たな出願は、“Divisional Application”ではなく“継続出願:continuation application”になります)することで、RCEと同様の効果が得られます。ただし上記継続出願のデメリットを考慮する必要があります。

(iii)既にRCEが請求されているが継続出願はまだ1回以下の場合、上述のようなデメリットがある継続出願ではなく新たに導入された簡易継続出願(Streamlined Continuation Application)を利用することが考えられます(1つのApplication Familyにつき1回のみ)簡易継続出願に基づく新たな出願は、審査官の処理待ちリスト上で優先的に取扱われ、早期の審査が期待できます。なおこの場合親出願は放棄する必要があります

(iv)(RCE後の)Final Office Actionに対し、審判請求(Notice of Appeal)及びPre-Appeal Brief Conferenceの請求を行うことが考えられます。Pre-Appeal Brief Conferenceにて最終拒絶が維持できないと判断されれば、審査が再開されて最終拒絶後の補正が受理されます。即ちRCEと同様の効果が得られることになります。一方最終拒絶が維持された場合は、最終拒絶時のクレームに関し審判の審理で争うか、上記Continuation Applicationで対応することができます。

 

1.3 分割出願(Divisional Application)について

(1)審査官から限定要求を受けた場合、選択しなかったクレームを分割出願(Divisional Application)することができます(これまでと同様)

(2)クレーム数が制限(後述)を超える場合、出願人は所定の期間内に自ら限定要求の提案(SRRSuggested Restriction Requirement)を行い、一出願を複数出願に分割することができます。ただし出願人が限定要求の提案(SRR)を提出しても必ず認められるとは限らず、審査官が独自の判断に基づく限定要求を発する可能性があります。

(i)審査官からの限定要求に対する分割出願(Divisional Application)は、限定要求に反論(traverse)しなかった場合にのみ行うことができます。限定要求に反論した場合は、分割出願を行ってもContinuation Applicationとみなされます(回数制限の規定が適用される)したがって、限定要求への反論はこれまで以上にメリットが少なくなると考えられます。

(ii)適法な分割出願(審査官による限定要求に応答する場合、及び自発的限定要求の提案が認められた場合のいずれも)を行うと、分割出願は親出願とは別個の“Application Family”を形成し、そのApplication Family内で新たに「2回の継続出願+1回の継続審査請求(RCE)」を行うことができます。

 

1.4 継続的出願に関する経過措置

 改正規則公表(8月21日)の時点で既に2回の継続出願(Continuation Application;自発的分割出願を含む)を行っている場合は、11月1日以降、請願(Petition)/書類(Showing)なしで後1回の継続出願を行うことができます(one-moreルールあり)。一方、改正規則施行(11月1日)の時点で既に継続審査請求(RCE)が行われている場合、改正規則施行後さらに継続審査請求を行うには請願/書類が必要となります(one-moreルールなし)

 

2.クレーム数の制限とその対策

2.1 独立/従属クレーム数の制限

 2007年8月21日付で発表された米国の改正特許規則では、一出願に含められるクレームは、原則として「独立クレーム5個以内、かつ総クレーム数25個まで」となりました。この改正規則は2007年11月1日時点においてFirst Office Actionを受けていない出願について(遡及的に)適用されます。

 

2.2 クレーム数の計算方式

(1)「従属クレーム」と判断されるためには、(i)引用するクレームの全ての構成要件を含むこと、(ii)引用するクレームの法定主題(Subject Matter)をさらに限定するものであること、等の要件が必要となります。従って、引用するクレームの技術的特徴と関係がない他の技術的特徴を付加するようなクレームは引用形式で記載されていても従属クレームとは認められず、独立クレームとして扱われる場合があります。例えば、他のカテゴリのクレームを引用する形式の従属クレーム(例えば、方法クレームに対しその方法を用いる装置のクレーム)は、独立クレームとして計算されます。また、同一カテゴリであっても、引用するクレームの法定主題をさらに限定する形式でないクレーム(例えば、ユニットとそのユニットを用いた装置)は、独立クレームとして計算されます。

 なお、クレーム数に応じた追加料金(Official Fee)の規定も今までと同様に適用されます。

(2)複数従属形式のクレームは引用するクレーム数分のクレームが記載されているものとして扱われますが、マーカッシュ形式のクレームは1個のクレームとして扱われます。また、同時に係属する他の関連出願(同時期に出願され、発明者・譲受人が共通、等)との間で同様のクレームを記載している場合、それらのクレームは双方の出願においてクレーム数の計算に含められます(一種のダブルカウントがされる;後述)

 

2.3 クレーム数の制限を超える場合の対策

(1)10月31日以前の出願(First Office Actionを受けていない場合)

 出願時に上記制限を超える場合USPTOから通知がなされ、原則として2ヶ月以内に(最大6ヶ月まで延長可能)

       (i)上記制限を満たすようクレームを削除する

       (ii)自発的な限定要求の提案(SRRSuggested Restriction Requirement)を行い1出願を複数出願に分割する

       (iii)先行技術との関係等を記載した所定の書面(ESDExamination Support Document)を提出し超過するクレームについても審査を受ける

のいずれかにより対応することが必要となります。(ii)のSRR及び(iii)のESDは、First Office Actionの前に提出する必要があります(USPTOからの通知を受ける前に自発的に出しても良い)。なお(i)のクレーム削除により対応した場合、超過クレームに対する追加費用(Official Fee)が払い戻されます。

(2)11月1日以降に米国出願又は国内移行した出願

 出願時に上記制限を超える場合USPTOから通知がなされ、2ヶ月以内に(延長不可)、上記(i)又は(iii)により対応する必要があります。上記(ii)SRRの提出はUSPTOからの通知前に限られ、通知後はSRRを提出することはできません。

 

2.4 好ましい対策について

 上記(ii)のSRRでは、出願人の提案が必ずしも認められるとは限りません。また(iii)のESDが認められるための要件は非常に厳しく(従来技術サーチ結果の添付、従来技術とクレームの構成要件との関係を提示、逐次更新の義務、禁反言の適用 等)、かつ費用も高額になるためESDは現実的な措置ではないと考えられます。したがって今後米国出願・国内移行する案件については可能な限り(ii)、(iii)による対応を避け、出願の際にクレームの絞込みを行って上記制限を満たす状態で米国出願・国内移行を行うことが好ましいと考えられます。また既に出願済みの案件については、USPTOからの通知の際又は自発的に(i)、(ii)により対応することが好ましいと考えられます。

 

3.関連出願情報の開示義務

 以下のように関連出願の情報開示義務が規定されました。これら開示義務を満たしていないと判断された場合、審査段階及びその後の権利行使において不利になる(不公正な行為として権利行使が認められない、等IDS不提出の場合と同様の不利益を被る)可能性があるので注意が必要です。

3.1 関連出願の特定(37 CFR 1.78(f)(1))

(1)10月31日以前に米国出願又は国内移行した出願

 2007年10月31日以前に米国出願又は国内移行された許可状態にない出願については、他の所有者共通出願又は特許(米国出願日又は優先日が当該出願と同一で、少なくとも一人の発明者が共通かつ少なくとも一人の譲受人が共通のもの)を書面により特定しなければなりません(米国出願・移行日から4ヶ月又は他の出願の受領通知から2ヶ月以内のいずれか遅い日まで;審査係属中の出願については200821日まで)

(2)11月1日以降に米国出願又は国内移行した出願

 2007年11月1日以降に米国出願又は国内移行された許可状態にない出願において、他の所有者共通出願又は特許(米国出願日又は優先日が当該出願の前後2ヶ月以内で、少なくとも一人の発明者が共通かつ少なくとも一人の譲受人が共通のもの)を書面により特定しなければなりません(米国出願・移行日から4ヶ月又は他の出願の受領通知から2ヶ月以内のいずれか遅い日まで)

 なお、上記情報の開示義務は代理人が異なる場合であっても適用されますので、国内及び米国代理人とクライアントとの共同作業により関連出願の特定作業を行う必要があります。

 

3.2 クレーム重複の推定(37 CFR 1.78(f)(2))

(1)二以上の出願において米国出願日又は優先日が同一、かつ「開示が実質的に重複する」場合、それらの出願において「少なくとも一つのクレームは“特許的に区別可能でない(not patentably distinct)”」と推定(rebuttable presumption)されます。「開示が実質的に重複する」とは、ある出願のクレームが他の出願の開示(明細書、図面等)でサポートされる場合をいいます。

 この場合、()米国出願・移行日から4ヶ月、()区別できない(indistinct)クレームが追加された日、又は()他の出願の受領通知から2ヶ月のいずれか遅い日までに(111日時点で係属中の出願については200821日まで)、1.クレームが区別可能(distinct)である旨を反論(rebut)する、2.ターミナルディスクレーマを提出する、3.区別可能でないクレームを削除する、により対処する必要があります。

 

3.3 所有者共通の出願に対するクレーム数の計算(37 CFR 1.78(f)(3))

 2以上の所有者共通の出願(Commonly Owned Application)で、特許的に区別できない(indistinct)一以上のクレームがある場合、全出願のクレームを合計した数のクレームがそれぞれの出願に記載されているものとしてクレーム数の制限規定の適用が判断されます(aggregation/recombine)例えば、クレーム数25個の所有者共通出願が2つあり、それら出願間で一つでもindistinctなクレームがあると判断された場合、いずれの出願も50個のクレームがあると判断されます。

 この場合、合理的理由(good and sufficient reason)がない限り、indistinctなクレームが一の出願のみに含まれることとなるようクレームの削除を命じられる場合があります

 

弁理士:松浦憲三 担当:永田秀則

2006年10月30日

改正特許法等の施行日についてのお知らせ

 この度の政令公布により、改正特許法等の施行日が2007年4月1日に決定されましたのでお知らせ申し上げます。改正事項は、2006年8月10日付で弊所ホームページ(「ニュース」のコーナー)にてお知らせしましたように、(1)分割の時期的制限について、(2)分割出願の補正制限について、(3)別発明にする補正の禁止、となっています。 改正内容は、2006年8月10日付の弊所ニュースをご参照下さい。

弁理士:松浦憲三 担当:永田秀則

2006年8月10日

特許法改正の要点について

<1. 分割の時期的制限について>

(1)改正前
親出願の審査で、拒絶理由通知がなされている発明でも出願分割すれば新たな審査が始まる。
(2)改正後
上記の場合の他に、特許査定の謄本送達後30日以内・拒絶査定の謄本送達後30日以内に出願の分割が可能 改正特44条
(3)適用
施行日(2007年4月1日予定)以降の出願から適用
分割出願が施行日以降でも、親出願が施行日前の出願の場合適用なし
(4)対策
特許査定後でも分割でき、分割の機会が増える。
分割の為の拒絶査定不服審判請求をしなくてもよい。

<2. 分割出願の補正制限について>

(1)改正前
親出願の審査で、拒絶理由通知がなされている発明でも出願分割すれば新たな審査が始まる。
(2)改正後
親出願の審査で通知済みの拒絶理由が解消されていない発明について分割した場合、分割出願の審査では1回目の拒絶理由の通知であっても最後の拒絶理由の通知を受けた場合と同じ制限を受ける。改正特50条の2
<最後の拒絶理由の通知を受けた場合の制限>
1.請求項の削除、2.特許請求の範囲の限定的減縮、3.誤記の訂正、4.明瞭でない記載の釈明
(3)適用
施行日以降の出願から適用
(4)対策
分割出願の審査請求時に、親出願の審査で通知済みの拒絶理由を解消する補正を行う。

<3. 別発明に変更する補正の禁止>

(1)改正前

拒絶理由通知を受けた後に特許請求の範囲を補正して(出願当初の明細書記載の)別発明に変更する補正が可能

(2)改正後

拒絶理由を受けた後に特許請求の範囲を補正して別発明に変更する補正を禁止
別発明に変更する補正を拒絶の理由とする。(最後の拒絶理由の通知後の別発明に変更する補正は却下)改正特17条の2-4

(3)適用 施行日以降の出願から適用

(4)対策

別発明か否かを認定して補正することが必要
(別発明か否かの認定は特37条の単一性の要件を満たすか否か)
(再サーチが必要か否か)

<4. 改正法施行時期>

公布の日から1年以内(2007年4月1日の予定)

弁理士:松浦憲三

2006年5月16日

米国特許法改正案について

 現在、米国で議論されている特許法改正案の重要項目についてお知らせします。法改正案に対するパブリック・コメント(5月初めで締め切り)では反対意見も寄せられており、最終的に法案として成立するか否かは微妙な状況です。

 改正案の詳細は、USPTOのWebサイトで閲覧することができます。

<改正事項(案)>

1. 審査遅延対策
近年、出願件数の増加に伴い、First Action発行までの所要時間や審査官の手持ち案件数が増加しており、審査遅延が重要な問題となっている。そこで、"21世紀戦略計画(The 21st Century Strategic Plan)"の一環として、審査負担を軽減し、迅速な審査を実現するため、以下の点について改正を検討している。

(1)継続出願回数の制限
1出願につき原則として1回の継続出願(RCE含む)しか認めない。さらなる継続出願は、やむを得ない事情があった時に限る。
(2)分割出願の制限
PCT規則により発明の単一性がないとされたもの、限定/選択要求に基づくものなど、非自発的な分割のみ認める。
(3)クレーム数の制限
審査当初は、全ての独立クレームを含め、クレーム数は10までとする。当初指定したクレームが許可された後、指定しなかったクレームについても審査を受けることが可能。当初指定クレームが拒絶された場合、反論・補正、新クレームの指定が可能。
(4)その他
CIP(部分継続出願)に対する制約の強化、関連出願・二重特許に関する情報の提示義務 等

2. 新電子出願システム(EFS-Web)の導入
出願(特許・意匠)、関連書類(補正書、請願、審判関連書類、関連文献提出 等)の提出、手続費用の納付その他が常時オンラインで可能(PDFファイル使用可)。2006年3月16日運用開始。

永田秀則

2004年12月8日

米国特許商標庁(USPTO)手続き料金改定のお知らせ

 2004年12月8日付で、米国特許商標庁(USPTO)に対する手続きの料金が改定されました。概要は以下の通りです。

(1)料金体系の変更

従来の「基本出願料(Basic filing fee)」が、「基本出願料(Basic filing fee)」、「サーチ料(Search Fee)」、「審査料(Examination Fee)」の3つに分けられています。基本出願料は減額されていますが、全体では値上がりしています。

(2)料金比較例

  • 従 来
    基本出願料: $790
    合 計: $790

  • 改定後
    基本出願料: $300
    サーチ料: $500
    合 計: $200
    合 計: $1,000

料金改定の詳細は、米国特許商標庁(USPTO)のWeb Siteを御参照下さい。


米国特許庁(USPTO)手続き料金(2004年12月8日発効;抜粋)

項目 料金($)
Basic filing fee - Utility(基本出願料)
2004年12月8日以降の出願
300.00
Basic filing fee - Utility(基本出願料)
2004年12月8日より前の出願
790.00
Utility Search Fee(サーチ料):新設 500.00
Utility Examination Fee(審査料):新設 200.00
Independent claims in excess of three 200.00
Claims in excess of twenty 50.00
Multiple dependent claim 360.00
Surcharge - Late filing fee or oath or declaration 130.00
Utility Application Size Fee - for each additional 50 sheets that exceeds 100 sheets 250.00
Request for continued examination (RCE) 790.00
Provisional application filing fee 200.00
Provisional Application Size Fee - for each additional 50 sheets that exceeds 100 sheets 250.00
Surcharge - Late provisional filing fee or cover sheet 50.00
Non-English specification 130.00
Utility issue fee(登録料) 1,400.00


担当:永田秀則

2003年6月18日

パソコンソフト3採用にあたっての弊所取り扱い

 平成15年7月1日から特許庁でパソコンソフト3が採用されることとなりました。特許庁は、採用にあたり、平成15年7月1日から同年8月31日まではパソコンソフト2とパソコンソフト3のどちらを使用しても手続することができるという移行期間を設けています。これにより、弊所では下記の取り扱いをすることと致しますので、宜しくお願い申し上げます。

1. 出願

  1. 旧様式(旧明細書項目かつ36文字×29行)で既に作成した又は作成中の明細書は、旧様式のまま、チェック出しを行い、パソコンソフト2で出願します。
    • 旧様式で作成した明細書を9月1日以降に出願することとなった場合には、弊所にて新様式に変換します。
  2. 6月18日以降着手する明細書は、6月中の出願のものでない限り、新様式(新明細書項目かつ40文字×50行)で作成し、チェック出しを行い、パソコンソフト3で出願します。

2. 手続補正書及び意見書

  1. 出願をパソコンソフト2で行なったもの
    1. 8月31日庁提出分までは旧補正様式かつ36文字×29行で手続補正書を作成すると共に36文字×29行で意見書を作成し、パソコンソフト2で提出します。
    2. 9月1日以降庁提出分は、旧補正様式かつ40文字×50行で手続補正書を作成すると共に40文字×50行で意見書を作成し、パソコンソフト3で提出します。
  2. 出願をパソコンソフト3で行なったもの
    1. 庁提出日にかかわらず、新補正様式かつ40文字×50行で手続補正書を作成すると共に40文字×50行で意見書を作成し、パソコンソフト3で提出します。

担当:飯田啓之

2003年5月9日

明細書等の出願形態の変更

 平成15年7月1日から、特許法の改正規定が施行されます。今回は主に明細書等の出願形態の変更です。特許庁の情報システムがXML形式対応になるため、それに伴った様式変更がされます。平成15年8月31日までは移行期間のため旧様式での出願が可能ですが、同年9月1日からは完全に新様式での出願が求められます。

主な改正点は以下の通りです。

1. 明細書と特許請求の範囲が分離する
2. 特・実出願書類のレイアウトが40文字×50行になる
3. 明細書内の各項目名が変更される
4. 外国語書面出願がPDF形式で可能になる

担当:飯田啓之

2003年3月31日

事務所移転のご連絡

 平成15年3月31日(月)より、新都心国際特許事務所は下記に移転致しました。

移転先:

〒163-0220
東京都新宿区西新宿2-6-1
新宿住友(三角)ビル20階

業務開始日:
平成15年3月31日(月)

電話番号、FAX番号、E-mailアドレスは従来通りです。
今後とも、よろしくお願い致します。

担当:飯田啓之

2002年12月

「特許法等の一部を改正する法律」の施行について(その2)

 平成15年1月1日から、特許法の間接侵害拡充規定が施行されます。従来、専用品しか間接侵害を構成しませんでしたが、今回の改正で汎用品でも特許発明のポイントに関係するものは一定の要件を満たせば間接侵害を構成することになり、権利範囲が拡充されます。

担当:飯田啓之

2002年12月

「特許法等の一部を改正する法律」の施行について(その1)

 6月19日(火)に「特許法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」、「特許法施行令及び工業所有権に関する手続き等の特例に関する法律施行令の一部を改正する政令」が公布されました。

 特許法等の一部を改正する法律のうち、発明の実施の定義の見直し(特許法第2条第3項等)、文献公知発明情報の開示制度の導入(特許法第36条等)、 PCT出願の国内移行期間の延長(特許法第184条の4等)、標章の使用の定義の見直し(商標法第2条第3項)が平成14年9月1日に施行されます。

担当:飯田啓之

2002年4月11日

特許法等の一部を改正する法律案について

 4月11日に衆議院本会議において、「特許法等の一部を改正する法律案」、「弁理士法の一部を改正する法律案」が可決され、成立しました。

1. 法律改正の目的

  1. 急速な情報技術分野の発展に伴った法整備と、特許権等の効力範囲の在り方を見直すため
  2. 特許及び実用新案の出願方式の見直しのため

2. 法律改正の概要

  1. ソフトウェア等、情報財の特許保護強化とネットワーク取引の促進
    1. 無体物(コンピュータプログラム等)に関する特許法における保護範囲を明確にする
    2. 特許権侵害の範囲を明確及び拡充する。例えば、特許されたプログラム等をネットワーク上で無断で送信する行為等も範囲内とする
  2. 特許法の間接侵害規定の拡充
    • 以前は間接侵害対象は、専用部品(その生産にのみ使用する物)に限られていたが、悪意(特許発明であること及び侵害に用いられることを知りながら)で部品を供給する行為を間接侵害の成立範囲とし、権利保護強化を図る。
  3. ネットビジネスで使用される商標の信用保護強化
    • 情報技術分野の発展に伴い、ネットワークを介した商品流通、サービス提供及び広告等の事業活動において、画面上に商標を使用する行為についても、商標権侵害となることを明確化する。
  4. 出願人の負担軽減と迅速かつ的確な審査の促進
    1. 制度の国際調和:明細書と特許請求の範囲とを分離
    2. 国際出願:国内書面提出期間を30ヶ月に延長、翻訳文提出には2ケ月の猶予期間
    3. 先行技術文献情報の開示制度の導入
    4. 国際商標登録出願における個別手数料の分割納付

担当:飯田啓之

2001年11月

米国特許出願の継続審査請求について

 米国特許商標庁の手続規定が改正され、ファイナルアクションに対処する手続として、新たに「継続審査請求」(Request for Continued Examination:RCE)という制度が導入されました。これは、従来の「継続手続出願」(Continued Prosecution Application:CPA)に代わるもので、米国出願日が2000年5月29日以降の出願に適用されます。

 ファイナルアクションへの応答では、クレームの実質的な補正や新たな論点での意見の主張は、ほとんどの場合アドバイザリーアクションによって却下されてしまいます。そのため、ファイナルとされた審査を再開させるための手続として、従来は継続手続出願(CPA)を行っていましたが、2000年5月29日以降の出願については、CPAの代わりに継続審査請求(RCE)を行うことになります。RCEの手数料は新規出願料と同額(2001年10月現在740ドル)で、追加クレーム料は不要です。

 CPAとRCEとの最大の相違点は、CPAが出願の出し直し的な性格を有するのに対し、RCEは出願はそのままで審査の続行的な性格を持つ点ですが、細かい違いは多数あります。

 限定要求(Election/Restriction Requirement)で別発明とされたクレームの分割出願や、新規事項を追加した一部継続出願(Continuation in Part:CIP)の手続については、従来通りであり、変更がありません。

 2000年5月29日より前の出願については、CPAとRCEのどちらかを選ぶことができます。選択の際に考慮すべき要素は、費用、特許商標庁の手続の遅滞を理由とする特許期間延長の可能性、改正特許法の適用を受けるために新たな出願日を確保する必要性など、多岐にわたりますので、個々の案件ごとの検討が必要です。

担当:増田重之